日本毒性学会
付加体科学部会
第1回キックオフシンポジウム

実行委員長挨拶

 当部会HPをご覧の皆様,ようこそお越しくださいました.付加体科学部会部会長を務めております上原 孝と申します.この度,第1回付加体科学部会研究会2023を2023年9月26日(火)と27日(水)の2日間,岡山大学創立50周年記念館・金光ホールにて開催させていただくこととなりました.
 地球上には多種多様の化学物質が存在しており,人類は水,大気,食物,薬,サプリメントなどを介して,意図的にあるいは非意図的にこれらを体内に取り入れています.したがって,私たちは生涯に渡って無数の化学物質に曝露され続けているとも言えます.これらが生体にどのように影響しているのかを明らかにする学問として「エクスポソーム」という概念が提唱されていますが,膨大な数の化学物質の影響を探ることはほとんど不可能です.一方で,これまでベンゾピレンやアセトアミノフェンなどの親電子代謝物が生体内分子と共有結合を形成し,毒性を発揮することが報告されています.加えて,生体内からも複数の内因性親電子物質が同定され,それらが特定基質との結合を介してシグナル分子として働いていることが次々に証明されています.以上の知見は,親電子物質が生体にとって善でもあり,悪でもあることを示唆しています.
 このように異物や生体内物質によるタンパク質の付加体形成に興味を抱く研究者が増加したことから,私たちは,毒性学を理解しながら研究領域を超えて新たな学問分野を創生し,成果を議論する場が必要であると考えました.そこで,産官学の毒性学会会員らと協議し,毒性学会および他学会の研究者がタンパク質などとの付加体形成で生じる細胞内レドックスシグナル系の変動やエピジェネティクスなどの生体内変化,それに起因する疾患発症に関する研究成果を公表し,情報交換する機会を設けることとしました.そのために,日本毒性学会内に,化学物質の生体内分子への結合とその作用に関する研究を統合的に発展させる場として,2022年に付加体科学部会を設立しました.
 この度,キックオフシンポジウムを兼ねた第1回付加体科学部会研究会2023を開催することとなりました.どうぞ宜しくお願い申し上げます.

第1回付加体科学部会研究会2023
実行委員長 上原 孝
(岡山大学・学術研究院医歯薬学域・薬効解析学)