日本毒性学会
付加体科学部会
第2回シンポジウム

実行委員長挨拶

 この度、2024年10月25日(金)と26日(土)の2日間にわたり、理化学研究所 鈴木梅太郎記念ホールにて「付加体科学部会第2回シンポジウム」を開催する運びとなりました。

 一卵性双生児を用いた研究により、ゲノムDNAの情報よりも環境因子がヒトの健康や疾患の発症に大きな影響を与えることが示唆されています。しかし、我々を取り巻く環境中には膨大な数の化学物質が存在し、どの環境物質がどのようなメカニズムで影響を与えているのかを統合的に解析した例はほとんどありません。

 生命活動を担うタンパク質の機能は、ゲノムDNA中の塩基配列により決まる一方で、多くのタンパク質は翻訳後に起こる様々な化学修飾によりその機能が調節されています。これらの化学修飾は、生体内に存在する化学物質がタンパク質と「付加体」を形成することにより起こります。したがって、非意図的に体内に取り込まれた環境化学物質がタンパク質などの生体内高分子と「付加体」を形成し、その機能を変化させることが、環境化学物質の作用メカニズムである可能性があります。実際に、ベンゾピレンなどの親電子代謝物は、生体内分子と共有結合形成(付加体形成)を介して毒性を発揮することが知られています。

 2022年、日本毒性学会内において、化学物質の生体内分子への結合とその作用に関する研究を統合的に発展させる場として「付加体科学部会」が設立されました。昨年、岡山大学で第1回キックオフシンポジウムが開催され、今回、第2回シンポジウムを理化学研究所の闐闐先生のご協力のもと、理化学研究所で開催することとなりました。

 今回のシンポジウムでは、若手優秀研究賞ならびに学生優秀発表賞を設けておりますので、若手研究者や学生の皆さんの積極的な応募をお待ちしております。本シンポジウムが「付加体科学」という新しい研究分野の発展に向けた有益な議論の場となることを期待しております。多くの皆様のご参加とご発表を心よりお待ちしております。

付加体科学部会 第2回シンポジウム
実行委員長 伊藤 昭博
(東京薬科大学)