部会の目的

 金属は人間生活に欠くことのできない有用性を持ち、様々な用途に広く利用されている。しかし金属は一般に毒性が高く、環境中に排出されて水、空気、食品などを汚染することによって人間の健康に障害を与えることがある。一方、金属の中には人間の生理機能維持に必須の役割を果たすものもあり、我々の健康を維持していくためには生体と金属との関係を深く正確に理解する必要がある。

 国内には生体と金属の係わりに関する研究を対象とする学会等の研究組織が多数存在する。しかし、それら組織の研究対象は細分化されており、また、相互の連携もほとんどとられていない。例えば、金属の毒性を正確に評価するためには金属の生理作用も知っておく必要があるが、毒性と生理作用の両方を研究対象に含めている組織はごく稀である。したがって、全ての生物系金属研究を包括し、関連研究者が一堂に会して議論する場が設けられれば研究者間の交流促進や効率的な情報交換が可能となり、我が国の金属研究の更なる発展に大きく貢献できると考えられる。そこで、生物系金属研究に携わる研究者の結束と研究強化を図ることを目的として、日本最大の毒性学関連組織である日本毒性学会に専門部会の1つとして「生体金属部会」を設立した。