会長挨拶
2017年夏に開催の理事会で第93回学術集会の会長を仰せつかって以来、様々な視点から準備を進めて参りました。工学基礎領域の会長としては、2009年東京の椎名 毅 会長以来11年間ぶり、また東北地方(仙台)での開催は、1966年 岡 捨己 会長、1970年 菊池喜充 会長、1975年 板原克哉 会長、1982年 田中元直 会長、1987年 中鉢憲賢 会長に続く1997年 棚橋善克 会長 以来23年間ぶりになり、東北地方会を中心に多くの先生方に相談し、本学術集会の主題を「原点回帰」と設定しました。
本学会初代会長 故菊池喜充 東北大学電気通信研究所 教授をはじめ、多くの先生方が超音波医学に対し真摯な姿勢で取り組まれ、現在の礎を築かれました。しかし、その黎明期を支え研究の面白さと奥深さを理解する研究者の多くが定年を迎え、本学会にとって今後は予断を許されない大切な時期と言えます。本学会の学術が、各臨床領域の他学会に埋もれず、さらに発展するには、本学会の特長である、臨床領域と工学基礎の融合、企業との連携の推進、さらに自分のアイデアを実現する心躍る感覚を次世代が経験する機会を設けることが必要です。ここに「原点回帰」の意味があります。超音波医学の起点に戻り、「学術集会の本来の意義」を改めて見つめ直し、研究発表の尊重、すなわち「学術重視」という結論に達した次第です。
学術集会での研究成果発表の意義は、①昼夜ない苦労の末に得た素晴らしい成果の喜びを、聴講する方々と共に分ち合いたいこと、②発表に対し、厳しくとも有意義な議論を得て、次の研究に繋げること、にあるからです。これらは当然なことではありますが、最近の多くの学会では、やや疎かにされているように感じます。
したがって、学術集会の最重要点は、一般の研究発表と質疑応答にあると言え、本学術集会では、その環境を整え、発表のステイタス向上を目指します。まず、①一般演題と症例報告を区別して口頭発表の持ち時間を長くし、査読点数によって口頭・ポスターを分けます。②特別企画を独立させず、各領域の一般セッションに「招待講演」として組み込み、一般の演者にも同じセッションでの発表の場を設定します(会場の並列数も減ります)、③主なセッションでは、keynote lecture(基調講演)を設け、当該セッションの目的や背景・現状を、その分野の専門家でなくても理解することを目指します。④査読によって面白いと判断された講演は、「注目講演」として倍の持ち時間を割り当てます。さらに、⑤工学系の発表はなるべく臨床系に入り込んで頂き、工学系・臨床系が共に発表し議論できる合同セッションを設けます。それは、本学会の特長が、基礎領域と臨床領域が同じ研究テーマに関して議論し、あるいは連携の芽を見つけ出す点にあり、これが、他の医学系・工学系の学会にはない、本学会の生命線と言えるからです。
これだけ科学技術が発達しても、生体には人知の及ばぬことがまだ無限にあります。その生体の奇跡の仕組みを解き明かす計測・診断の基礎研究も、生体の奇跡の仕組みに積極的に働きかける治療の研究も、次代を担う研究者に強い「動機付け」を与えると期待できます。当然のことですが、そうした「研究の素晴らしさ」が伝えられる学会発表にすることが目標です。
なお、会場の仙台国際センターには、2015年に3,000m2の展示棟が増設されましたので、1つの屋根の下に、一般講演・ポスター発表・企業展示などをコンパクトに収めることができます。2015年に開業した仙台市地下鉄を利用すれば、JR仙台駅から5分間、東京駅から最速96分間で到着する便利な地です。また、東北には、豊かな自然、多彩な食文化もあります。
どうぞ多くの先生方にご出席頂き、有意義な時間をお過ごし頂ければ、大変幸いです。
2019年5月吉日
会長 金井 浩
(東北大学 工学研究科/医工学研究科 教授)
2020年5月22日~5月24日の3日間、宮城県仙台市にて開催するにあたり、多くの関係者の皆様よりご協力とご支援を賜り、学会運営を周到に進めて参りました。しかし、2020年1月末に日本においても感染が始まった新型コロナウイルスが、歴史に残るほどの猛威をふるい続けていることから、医療関係者ならびに関係各位の日々のご辛労を重く受け止め、本学術集会を、2020年12月1日~12月3日に延期し、完全web開催とすることに致しました。既に、およそ800件の講演の大切で貴重な成果をお預かりしており、更に、多くの企業・団体の皆様より、多大なるご協賛を賜っております。完全web開催になりましても、超音波医学の原点に回帰し、「学術集会本来の意義」を改めて見直し、学術を重視する理念は変わりありません。感染の流行が拡大している状況下でも、学術の場を切らさず、最善の方法で開催できるように鋭意努力して参ります。社会が英知を結集し、この感染が一刻も早く終息することを心から願っております。関係者の皆様のなお一層のご理解とご協力の程、何卒よろしくお願い申し上げます。
(2020年8月末日)