部会長挨拶
初代部会長の横井 毅先生から重責ながら誇りあるバトンを受け継ぎました。本部会ひいては日本毒性学会本体の発展に寄与すべく、研鑽しつつ、活動を展開して参ります。
あらためまして「部会制度」とは、「個々の毒性学研究分野において当該分野の充実と活性化を積極的に図ると共に非会員研究者との交流を促進することによって、毒性学研究全体の効率的な発展に寄与すること」を目的としており、「当該部会が関連する研究分野において国内で最大かつ最も権威のある組織になることを目指す」ことが謳われております(部会に関する規程)。
本部会の事業は、医薬品がヒトや動物に及ぼす有害な生体反応の機序研究を対象としており、この医薬品毒性機序に関連する領域の研究促進、研究者間交流及び、若手研究者育成等に努めることとなります。
医薬品の有害事象を考える際は、予め詳細なかたちで、当該標的分子・シグナルネットワークや、そもそも物性や薬物動態パラメーターといった参照すべきデータが既知であることが多く、加えて、薬効というアウトプットが存在することからリスクベネフィットのバランスを考慮することが前面に出やすく、はたまた非意図的ではなく意図的な摂取ということからも、他の毒性学に係る化学物質の有害事象を考える場合と、明らかに異なるわけです。
この事は、この部会発足の基盤ではありますが、ともすると、この部会の欠点とも成り得るものと考えるのです。というのは、こうした違いの基で部会として局所的に集まり発展することは、運営を誤れば、不透明化・密室化、閉鎖的・タコツボ的、保守的ひいては変化を嫌い定型化してしまい、結果として、あたかも金魚が水面でパクパクするかのごとく辛くなり、やがて自滅しかねません。
国内で最大かつ最も権威のある組織になるためには、当部会が担当する分野の特殊性について、いわばマニアックなレベルまでとことん深く追求し、その核心を露わとし、以って、それをわかりやすく学会本体に「還元」することこそ、当部会ひいては学会本体の発展に寄与できるものと考えております。中途半端な状態がよくないと思うのです。
したがって、できる限り学術年会の場においても、本部会活動のエッセンスにつき報告、「還元」することを目指し臨む予定です。当部会としては、この延長でさらに、医薬品とは異なる種類の化学物質について取り組んでおられる毒性学研究者の立場になって、どのように有害事象に迫っているのかについて、思いを馳せることも毒性学の発展上、とても重要なことと考えている次第です。
以上の視座に鑑み、横井先生のご挨拶での結語同様、産官学からの視点による話題を中心に学術交流を深め、また本部会としてのさらなる活動を、水面でパクパクしないように循環良く、領域を超えた研究者で発展させていくことが出来ますと幸甚です。
ご支援のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
2022年5 月
部会長 北嶋 聡 国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部 |